東手村の日暮し殿と雀追い
どんな伝承か
むかし、薩摩国東手村に日暮し殿という長者がいた。長者は訴訟の事で京へ行き、留守宅には幼い姉娘と弟の二人が残った。二人の生母柳御前は離婚して宮里村におり、長者の家には継母のお熊の方と、家の管理を任された左近尉が残っていた。この二人は幼い子どもたちにつらく当たり、雀追いの労働を強いた。二人の子は母の住む清水の川岸に来てしばしの逢瀬を楽しんだが、あまりの辛さに大川へ身を投げてしまう。土地の人々は憐れんで墓を作り、そばにたぶの木を植えた。十余年ののち帰国した長者は事情を知って二人を殺そうとしたが、柳御前のとりなしで国外追放にとどめ、離縁を恥じ入って再び柳御前を迎え、幸福に暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。