つらせ淵へ帰った蛇身の娘
どんな伝承か
東臼杵郡東郷町の庭田に、黒木某という百姓が住んでいた。暮らし向きはよかったが子がなかった。晩秋の夕暮れ、身重の巡礼が一夜の宿を乞い、今夜産をするが決して見ないでほしいと言って奥の八畳間に入った。主人がそっと覗くと、美しい巡礼は大蛇に変わり、子蛇を産むところであった。翌朝、巡礼は女児を抱いて現れ、自分は祖母山に住む蛇身で、この下の川の主とのあいだにこの子を産んだが、見られた以上、十年はその人に育てられねば通力を継げないと告げ、黄金を渡して去った。十年後、子は川筋へ走り去り、夫婦の叫びに応えてつらせ淵で見せた二度目の姿は大蛇であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。