湖水ヶ池に現れた緑に光る大蛇
どんな伝承か
昔、児湯郡新富町富田の六反田という所に湖水ヶ池という大きな池があり、その近くに貧しい父娘が住んでいた。父の太郎兵衛は美しい一人娘の成長を楽しみに暮らしていたが、ある日、娘が突然いなくなる。太郎兵衛が池のまわりを捜し歩きながら名を叫び続けると、黒髪をふり乱した娘の姿が水面に浮かび、見る間に深く沈んだ。恐ろしさも忘れてまた名を呼ぶと、今度は緑に光るすさまじい大蛇が現れた。これを見た太郎兵衛は、娘は池の主にさらわれたのだと嘆き、今日かぎりわが子は見まいと言って寂しく家へ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。