鎌倉に似た地に局が構えた鍋ヶ城
どんな伝承か
湯田村に稲荷大明神社がある。祭神は摂津住吉の末社の稲荷と同じで、得仏公の母堂丹後局がこの郷の鍋ヶ城にいたときに勧請したと伝える。局がこの郷に住んだのは、風景がことに優れ、地形が鎌倉に似ていたためで、南にある赤崎浜は鎌倉の由井浜に似ているといい、鍋ヶ城に居を定めて鎌倉の七社や厳島明神などを方々に建てたという。郷吏の説では、大黒という村名も御黒がなまったものだという。局は頼朝に寵せられて身ごもり、政子の妬みによってひそかに逃れ、摂津住吉で得仏公を産んだ。数年を近衛藤公の家で過ごしたのち東国へ帰り、頼朝は局を惟宗広言に賜った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。