雄鶏で退けたケムンとアモトガナシ
どんな伝承か
面縄の飛脚が夜更けに平土野へ発ち、義名山にかかったところ、道端の家に灯がともり、若い女が糸を繰っていた。ケムンに気をつけよと声をかけると女はその場に倒れ、袖の下を覗くと赤毛の背の低い者が胸に馬乗りになって首を絞めている。飛脚が鶏小屋から雄鶏を掴み出して鳴かせると、それは井之川岳の方角へ去った。だが道を急ぐ飛脚をなおも追ってくるので、大木の下で助けを乞うたところ、葉が降りかかって姿を隠してくれた。飛脚は枝を折って持ち帰り畑に挿すと、みるみる大木になった。村人はこれをアモトガナシと崇め、牛を屠って分け、骨を辻々に掛けて魔を払った。この行事は島くさらしと呼ばれ、大正の頃まで続いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。