石に乗って来た老人とイビガナシ
どんな伝承か
六月の暑い日、浜で涼んでいた二人が、海の彼方から石に乗って人形のようなものが近づくのを見た。一方は不審がって石を投げつけ、もう一方は神に違いないと家へ走って食べ物を運んだ。ぼろをまとった老人は、鍋で煮たものは食べぬ、シトギを持って来いと告げ、供えられたシトギはきれいに平らげた。そのとき、石を投げた者の家は子の生まれぬ石腹に、シトギを供えた者の家はシラミのごとく末長く栄えると言われたという。老人は今イビガナシのある場所の穴に住み、やがて忽然と姿を消した。以後、その穴をウキボージガナシ、乗ってきた石をイビガナシとして祀り、行方知れずになることをイビになるというようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。