森に棲む下等な神
どんな伝承か
森荘已池が回想する、大正十四年秋の夜の会話である。賢治がまだ花巻農学校の教師をしていたころ、森は盛岡から出かけて行き、宿直に泊まった。場所は校長室で、光った大きなテーブルの上に馬追いが迷い込み、賢治が提灯を提げて夜に畑からもいできたトマトが塩と一緒に置かれていた。賢治は窓からぼんやりした向こうの森を指して、あの森にいる神様はあまりよい神様ではなく、相当下等なのだと言ったという。森は、賢治がタブーや周囲の目を気にして、自分が実際に見聞きしたものを幻聴や民譚と称して控えめに語っていたと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。