河原の坊に下りてきた老高僧
どんな伝承か
宮沢賢治は先輩の金野医師に、早池峰山の七不思議の一つである河原の坊について語ったという。そこは早池峰の登山口、裾野を登りつめた岳川という清流の岸辺にあり、言い伝えでは何百年か前に天台宗の大きな寺があって修行僧も大勢集まり、随分盛んだったという。今も明け方にしんしんと読経の声が聞こえてくると噂される場所である。先年その山に登ったとき、賢治は大きな石に腰かけて休んでいた。すると山の方から、錫杖を突き鳴らし、眉が長く白い、見るからに清々しい高僧が下りてきた。登ったのは三年ほど前だが、その僧に会ったのは七百年ばかり前のようだったと賢治は語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。