犬の尾が導いた仲筋井戸
どんな伝承か
竹富島の仲筋村の酋長、新志花重成は一匹の犬を飼い、島の人々が飲み水に困らぬよう良い泉を掘りたいと願っていた。ある日、犬を連れて出かけると、犬が一時姿を消し、戻ってきて嬉しそうに尾を振った。見ると尾の先が泥水で濡れている。干ばつで水たまりもないのにおかしいと後を追うと、犬は芭蕉の茂みでカニの穴に尾を入れ、水を振りまいて見せた。重成が杖でその穴を掘ると清水が湧き出し、たちまち小さな池になった。重成は掘り下げて立派な井戸を仕上げ、犬に感謝してその形を犬の形に積み上げ、めでたい名をつけたという。以来この島では正月の若水や出産祝いの水に、必ずこの井戸の水を使うようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。