恋人を待って涙が溜まった無蔵水
どんな伝承か
昔、田名のドゾ屋の家に新垣マジルという娘がいた。恋人の漁師は舟で魚を釣りに出たが、暴風に流されて伊良部に流された。器量がよかったので方々から嫁にほしいと申し込まれたが、女はあの人がいつか帰るはずだと断り続け、親に、男は海のもずくになったから早く結婚しろと叱られた。それで灯台から廻って行く無蔵水の岩に登り、芭蕉を紡いで一人で暮らし、恋人が帰ったら着せるつもりで芭蕉着物の布を織って待った。しかし男はとうとう来ず、岩の窪みには女の泣いた涙が溜まったという。今も無蔵水に溜まる水はその涙だといい、これを詠んだ歌と女の返し歌が伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。