無蔵水に隠れた乙松と太郎兄の再会
どんな伝承か
伊平屋村田名の乙松という美しい娘は、多くの縁談のなかから同郷の太郎兄を選んで夫婦になった。ところが太郎兄は隣家の樽や三郎と海へ出たまま嵐に遭い、ひとり戻らなかった。三年経っても乙松は忘れられず再縁の話をことごとく断ったが、島一番の資産家の申し込みだけは、断れば祟りが恐ろしい。思いあまった乙松は夜のうちに家財を運び出し、田名から遠く離れた無蔵水に身を隠した。数日後、浜へ寄ってきた舟から降りた鬚の男は太郎兄だった。二人は連れ立って田名へ戻り、村人は歌を作って乙松をたたえたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。