甲斐を望んで葬られた奈根の落人塚
どんな伝承か
北設楽郡一帯は古くからたびたび戦場となり、塚や墓が無数に残るという。三輪村大字奈根、いまの東栄町にある名も伝わらぬ塚もその一つで、長篠の戦に敗れた武田方の落人が道に迷ってたどり着き、疲れと飢えで倒れた。村人が抱き起こすと、甲斐の国の者だ、死んだら甲斐の見える所へ埋めてくれと言い残して息絶えた。落人をかくまえば重罪という織田方の触れを恐れ、村人は死体を捨て置いた。その後、落人をむごく扱った家々に不幸が続き、村人自身も病んでうわごとに死体のことを口走ったため、息子が探し出して手厚く葬った。入仏の地名はここから起こったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。