老婆の水に報いた弘法井戸
どんな伝承か
旧両神村小森から四阿屋山へ向かって一時間ほど山道を登った中腹に、山居という集落がある。ここは水の便がひどく悪く、桶一杯の水を汲むのに半日もかかったという。ある夏、杖と鉦を持ち胸に鼓をかけた、上品な顔立ちの旅僧がやって来て、貧しい農家で水を乞うた。藁を打っていた老婆は、遠い水場から惜しまず水を運んで差し出した。事情を聞いた僧は、井戸を授けようと言って杖を地面に突き立てると、何もなかった所から清水が湧き出た。村人は後にこの僧が弘法大師だったと知り、弘法大師の井戸と名づけた。今も日照りに負けず湧き続けているという。
原典より
秩父郡両神村の大字小森四阿屋山へ向って約一時間、樹木におおわれた山道を行くと山の中腹にある山居という部落に着きます。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。