尊の箸と鈴が名づけた三つの山
どんな伝承か
秩父盆地の東縁を走る釜伏丘陵の南端に二本木峠がある。日本武尊が食事に用いた杉の箸を捨てたところ根づいて二本の大木に育ち、土地の人がそう呼ぶようになったという。尊はこの峠から尾根を北へたどったが、途中で日が暮れて夜道を登ったことから登夜山と呼ばれ、いつしか登谷山になったとされる。皇鈴山は、尊が腰に下げた鈴の音に応えて辺りの鈴草がいっせいに花開いたという言い伝えを山名の由来とし、この草は付近にしか見られず、今も五月初めに紫の花をつける。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。