天狗の腰掛松を伐った若者の最期
どんな伝承か
東秩父村槻川の中川という所には老松が茂り、天狗の腰掛松と呼ばれて恐れられ、薪拾いに入る者さえいなかった。ある時、若者たちの集まりでこの松が話題になり、試しに伐ってみようということになった。古老たちは口々に無茶だと止めたが聞き入れられず、そんなのは嘘だと言い張る一人が鋸を持って山へ向かい、半日がかりで大松を伐り倒した。何も起こらなかったと得意になって帰り、床に就いたその夜、天狗が寝床に現れて住みかを荒らした礼をすると言い、若者の陰茎を切り取って消えた。家人が駆けつけると若者は血に染まって死んでおり、翌朝、切られたものが松の枝に下がっていたという。今も村ではこの松を荒らすことを固く禁じている。
原典より
秩父郡東秩父村槻川に伝わるものですが、同村の中川というところに老松が生い茂り これらは天狗の腰掛松と人々に憧れられ、だれ一人薪拾いにも行きませんでした。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。