京へ帰る願いが叶った御前桜
どんな伝承か
小枝町の準胝観音堂から西南へ、旧鎌倉街道を少し行くと、お諏訪様のかたわらを常夏川が流れる。その西岸にひともと細やかな桜が茂っており、里人はこれを御前桜と呼ぶ。昔このあたりは阿尺国造が開拓した田園で、大満長者と呼ばれた衣笠屋敷があった。京の兵乱にまぎれて賊にさらわれ、人買いの手を経て陸奥まで売られてきた一公家の姫が、この家の家婢となった。姫は望郷の念をおさえきれず、春ごとに桜の一枝を手折り、京へ帰れるなら根づけ、この地に果てるなら枯れよと占って川辺にさし木した。枝はたちまち根づいて茂り、やがて京から迎えの使者が来て、姫は連れ戻されたという。
原典より
小枝町準胝観音堂から、西南へ、旧鎌倉街道を少し行くと、お諏訪様のかたわらを流れる常夏川がある。—— 郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年))
『郡山の伝説』は、郡山市教育委員会が大島建彦の監修を受けて昭和六十一年に編んだ伝説集である。昭和五十九年度の「ふるさとの文化財調査事業」で調査員が市内全域から採集した伝説を中心に、郷土誌などで補った話を収め、采女伝説や坂上田村麻呂・源義家・弘法大師にまつわる話が多い。『日本伝説名彙』にならって木・石岩・水・塚・坂峠山・祠堂・家村・祭礼行事の部に分け、各話に伝承地と報告者名を添え、巻頭に監修者の解説を置く。