阿武隈川に垂れた黒雲の龍
どんな伝承か
昔、小泉村の人々が土用過ぎに菅を刈り、阿武隈川の石河原に干し並べた。昼過ぎから西風が激しくなり、菅は河岸の篠やなぎに吹き寄せられて誰の物とも分からなくなった。話し合って分け、背負って帰ろうとすると大雷鳴が起こり、磐梯山の方角に横雲がたなびいて、一丈ばかりの真黒な、長刀の先のような雲が、切っ先を赤くして垂れ下がった。村人が笠石のあたりに集まって見ていると、雲は久保田村の後ろまで下がり、黒雲の中から松明の火のように光りわたって、雷鳴とともに岳山の方へ消えたという。あれが龍だと語り継がれた。
原典より
昔、小泉村の人々が、土用も過ぎたので、菅を刈った。—— 郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
郡山の伝説(郡山市教育委員会(編)・大島建彦(監修)・ふるさとの文化財調査事業・1986年(昭和61年))
『郡山の伝説』は、郡山市教育委員会が大島建彦の監修を受けて昭和六十一年に編んだ伝説集である。昭和五十九年度の「ふるさとの文化財調査事業」で調査員が市内全域から採集した伝説を中心に、郷土誌などで補った話を収め、采女伝説や坂上田村麻呂・源義家・弘法大師にまつわる話が多い。『日本伝説名彙』にならって木・石岩・水・塚・坂峠山・祠堂・家村・祭礼行事の部に分け、各話に伝承地と報告者名を添え、巻頭に監修者の解説を置く。