天王寺金堂に入った難波の大龍
どんな伝承か
細々要記によると、正平十六年六月二十三日、空がにわかに曇って雪が降り、身を切るような寒さになった。それに先立つ十九日、天王寺の金堂が倒れる前に、難波の浦から二匹の大龍が浮かび出て金堂の中へ入り、そのあと激しい雷と大地震が起こって金堂が倒れたという。太平記も、大地震のとき雨風が荒れ、難波の浦の沖から大龍が二匹浮かんで天王寺の金堂へ入るように見え、雲の中で鏑矢の音が響いて稲妻が四方に光り、龍が四天王と戦っているようだったと書く。龍が去るときにまた大地が揺れ、金堂は粉々に崩れたという。
原典より
去ぬる十九日天王寺の金堂てん倒の以前難波の浦より大龍二つ浮び來り、金堂の中へ入り、其の後、雷電おびたいしく大地震して全堂てん倒すこ云ふ—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。