根本中堂の前で結ばれた前太平記の密約
どんな伝承か
『前太平記』では比叡山の密約がいっそう膨らむ。承平二年、在京中の将門と純友は比叡山の根本中堂の前で行き逢い、食籠や破子を取り出して酒宴を続けた。将門は平安城を見下ろして黙り込み、わけを問う純友に、桓武天皇の皇子でありながら祖先の葛原親王だけが位に洩れ、その後胤の自分も京で検非違使にさえなれず奴婢と同じだと憤懣をぶちまけ、味方になってくれと反乱の相談をもちかける。純友は即座に同調し、将門は天下を取れば藤氏嫡流の純友に関白の地位を約束する。西海に帰った純友は、捕えた海賊を手下にするため将門の令旨を偽作して読み上げたという。著者は、将門が全日本的な反乱の主謀者に粉飾されたと論じる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。