恐山のイタコが伝える冥界の声
どんな伝承か
戦の渦中で討たれ修羅道に堕ちた武者が、この世に姿をあらわして苦しみを語り回向を求めるという筋は、後世の能の修羅物などにも数多く見られる趣向である。亡魂が人の夢に現れ、生前の悲劇や臨終のありさまを物語り、冥界の苦患を告げて抜苦往生の法会供養を要請するという形式は、軍記語りの根本的な形式であるという。そして青森県の恐山などでは、霊媒の口を通じた敗者のいくさがたりが今も生きており、先の大戦で夫や子を失った人びとが、イタコからその冥界の声を聞いて涙を流していることが指摘されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。