梵鐘の怨霊と夜毎の怪火・竜燈
どんな伝承か
永禄九年、下妻城主の多賀谷氏が観音堂を建てて入仏供養を行ってからのち、城山の下の江水から夜ごとに怪しい火が現れ、観音の境内に入っては消えるようになった。火の出る場所は日を追って下流の崎房の香取社の麓あたりへ移り、ついには飯沼口に至った。沼のほとりの里人は、沈んだ梵鐘の怨霊が観音に行燈を献じているのだ、あるいは竜燈だと言い伝えて恐れてやまなかった。仏性寺の住職はこれを梵鐘の祟りと憂え、氏子と相談して梵鐘供養の大施餓鬼を執り行ったところ、その後は怪異が絶えたという。飯沼村栗山新田の一部がいまも行燈口と呼ばれるのはこの縁によるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。