乳母銀杏
どんな伝承か
横浜・駒岡の常倫寺に立つ大イチョウには、枝の奇形がつららのように垂れた部分があり、これを乳房に見立てて乳母銀杏と呼ぶ。江戸時代、この地に別宅を持っていた旗本久志本左京亮の妻は、男の子常勝を産んだものの乳がまったく出ず、子は日ごとに痩せ衰えた。思いあまった夫婦は寺に参って乳を授けてほしいと一心に祈り、帰りがけに疲れ果ててこの木の下で休んだ。すると垂れた先から白い乳がしたたり、泣いていた子が夢中で吸い始めた。それから母は毎日子を抱いて木の下へ通い、常勝はたくましい武士に育ったという。のちには乳の出ない母親たちがこぞって祈願に訪れたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。