十郎身代わりの石
どんな伝承か
大磯の山下長者は四十歳を過ぎても子に恵まれず、妻が近くの虎池弁財天に数年願をかけると、ある夜夢にお告げがあり、目覚めると枕元に美しい小石があった。やがて生まれた女の子は弁財天の一字をとって虎と名付けられた。娘が育つにつれ仏間の小石も大きくなり、十八の頃には長さ七十センチほどの大石となって、長者は虎女の守り本尊とした。曽我十郎と五郎の兄弟は、父の仇工藤祐経が通る街道筋の長者宅に出入りし、十郎と虎女は結ばれた。これを嗅ぎつけた祐経が夜討ちをかけたが、十郎は身を伏せて難を逃れた。翌朝、守り本尊の石に矢が刺さり刀傷が残っていたので、この石は十郎身代わりの石とも呼ばれた。石は延台寺に秘蔵されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。