日輪を招き返した秩父の長者
どんな伝承か
秩父市山田の高篠山の中腹には長者屋敷と呼ばれる平地があり、かつて秩父の長者という富豪が住んでいたと伝わる。初代・二代目のうちは家が栄えたが、三代目は先祖の威光を笠に着て傍若無人に振る舞った。ある日、千軒に及ぶ配下の家族に、一日で秩父中の蕨を採り尽くすよう命じ、自分の家の者には高篠山を割り当てた。蕨の多い高篠山では間に合いそうにないので、長者が日の丸の扇で日輪を招き返すと、他の山の蕨が高篠山へ飛んできて、なおも採り尽くせない。再び扇で招くたびに家族が一人ずつ消え、ついには長者も屋敷も消え失せたという。
原典より
秩父市山田高篠山の中腹に、長者屋敷と呼ばれる平地があり、ここに秩父の長者という富豪が住んでいた。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。