小僧に負けた西行の見返の桜
どんな伝承か
西行が比企郡都幾川村西平の慈光寺に参詣しようと表門に近づくと、妙な音が聞こえてきた。そこへ鎌を持ち牛を追った小僧が下りてきたので、あのドウドウという音は何かと尋ねると、寺の坊さんたちが朝粥を煮る音だと平然と答える。さらにどこへ行くのかと問えば、冬ぼきの夏枯草、すなわち麦を刈るのだと言う。意味がわからなかった西行は、慈光は名山で小僧までが優れたことを言うと感心し、そこから引き返した。この地は今もかえりうと呼ばれ、近くの見返の桜は西行が挿した桜の杖だという。小僧は観音の化身だったと伝えられる。
原典より
西行が慈光寺に参詣しようと表門に近づくと、変な音がきこえてくる。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。