耳を当てると人語が聞こえる信濃石
どんな伝承か
小鹿野の下小鹿野に、信濃石と呼ばれる珍しい形の石がある。大きさは一丈四方ほどで、真ん中に一尺四方ほどの穴があいている。この穴に耳を当てていると、人の話し声が聞こえるという。伝えによれば、昔この土地の馬方が信州へ行った帰り、馬に積んだ荷物の片方が軽くて傾くので、釣り合いを取るために道で拾って挟んできた小石が、ここに捨て置かれるうちにこれほどの大石に成長したのだという。『新編武蔵風土記稿』にも、この石のある所を小名信濃石と呼ぶと記されている。
原典より
「此石の有る所を、小名信濃石と唱ふ、凡一丈四方の大石にして、一尺四方許の穴有り、此穴に耳を入れ聴ときは、人語の響ありと云、往昔信濃国より馬に荷物を駄し来りしに、かたかた荷物の軽く傾くかたへ、此石を狭み来り、此所に捨置しが…—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。