悪口の人夫に天狗が投げた三本指の岩
どんな伝承か
小鹿野の合角にある天狗岩には、合角大天狗が祀られている。この天狗は女人禁制で、川狩り、つまり切った木を川の流れで運び出す仕事の人夫たちは、仕事の前にこの天狗に神酒を供えて安全を祈る習わしだった。ところがある時、一人の人夫が天狗の悪口を言った。するとその晩、藤倉川のかぶり岩付近の大曲に置いてあった材木が、転がり落ちた岩の下敷きになり、その人夫も姿を消してしまったという。天狗はその夜、大岩を人差し指と中指と薬指の三本に載せて河原へ放り投げたのだそうで、岩には今も三本の指の跡が残っている。
原典より
『秩父志』によると、ここに天狗岩という名の岩がある。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。