尾張の杉と松に住む天狗たち
どんな伝承か
尾張地方に伝わる天狗の話を集めたもの。浅井町河端の河端神社境内の大杉には昔から天狗が住むといわれ、夜通りかかった百姓が梢の光と燃える音に驚き、主婦が木の上から声をかけられた。一方でこの大杉さまの葉を子の布団の下に敷くと夜泣きが止まるとされ、お産の神としても参られる。大和村北高井では松林と熊野社の古杉の間を怪しい火が往来し、両方の梢に住む天狗が行き来するのだという。富田町の神明社には大正十年の暴風で倒れるまで天狗の住む大松があり、機嫌のよいときは笑い声が村中に響いた。犬山市の専念寺では松の梢の声が鞍馬の天狗と名乗り、枝に富士山の絵を残した。空洞の杉や八曽滝の天狗岩の音も天狗の仕業とされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。