天井から下りる大足の足洗い屋敷
どんな伝承か
寛永の末ごろ、この屋敷に小宮山左膳という旗本が住んでいた。妻およねに先立たれ、家事が不自由なところから、出入りの者の勧めでおさわという妾を抱えたのがこの話の起こりである。左膳の子膳一が荒木の道場から遅く帰ると、おさわは良之助を引き入れて枕を並べて寝ていた。無念やる方ない膳一は父の敵と斬りかかったが、まだ十五にもならぬ身では敵うはずもなく、次第に追い詰められた。危うくなった刹那、天井が轟き、一抱えもある毛むくじゃらの大きな足が下りてきて、良之助を押し潰した。続いておさわも押し潰されて死んだ。それ以来この部屋に寝ると、血だらけの大足が天井から下りてきて足洗いと叫ぶ。盥に水を持ってきて洗ってやるとすっと引っ込むという。この家を足洗い屋敷と呼び、本所七不思議の一つに数えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。