草刈り場へ村人を導いた宝登山のお犬様
どんな伝承か
宝登山は昔、麓の村々の人が草や薪を自由に採ってよい秣山で、村人は朝飯前に草を刈りに登るのが習わしだった。この草刈りは、わけは忘れられたがハヤマ刈りと呼ばれていた。ある信心深い村人が草刈りに出かけると、どこからか山犬が現れて、よい草刈り場へ案内してくれたという話が伝わる。この狼は宝登山のお犬様と呼ばれ、火伏せや盗難除けに強い力があるとされた。神社で狼の絵の札を受けることをお犬様を借りるといい、お犬様の守る道では怪我や凶事に遭うことがないという。言うことを聞かない子は、お犬様に食われるぞと脅された。山で野火が出たときも、神社のお犬様が鳴いて知らせたので、大事に至ったことはなかったという。
原典より
ある信仰深い村人が、この草刈りにいったところ、どこからか山犬が現れ、よい草刈場に案内してくれたという話も伝わっている。—— 秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年))
『秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行』は、神山弘が一九八四年に著した伝説探訪の紀行である。越辺川の流域や高麗郷、富士山のある村々、竹寺、武甲山と三峰山、宝登山、釜伏峠と粥新田峠など埼玉県西部の山村を歩き、土地の古老からの聞き書きと『新編武蔵風土記稿』などの記録を交えて、竜や大蛇、天狗、幽霊、将門などの伝説を語る。土地ごとの章に小見出しを立てた随筆体で、著者の前著『ものがたり奥武蔵』で扱わなかった土地を主にとりあげる。