子授け観音の霊験を見せた若夫婦
どんな伝承か
越生の町はずれの弘法山は、中腹に弘法山観音、頂上に諏訪神社を祀る。観音は弘法大師が彫ったとも伝わるが、著者は山の名に付会した話で大師とは関係ないとみる。本尊は夫婦和合と子授けの准胝観音で、安産と子育ての観音として知られ、願を掛けるときは縫いぐるみの乳房を付けた絵馬を納める珍しい風習があった。寺の老人は、子授けを祈った夫婦が後に礼に来たと記した祈願者名簿を見せてくれたが、著者は偶然だろうと半信半疑だった。ところが駐車場に降りると、生まれて二か月の赤子を抱いた若い夫婦が、観音さまから授かった子のお礼参りに来たと言い、著者は唖然としたという。
原典より
挨拶をかわした私達に、子供は生まれて二ヵ月目、ここの観音さまから授かったので、今日はそのお礼まいりであるという。—— 秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年))
『秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行』は、神山弘が一九八四年に著した伝説探訪の紀行である。越辺川の流域や高麗郷、富士山のある村々、竹寺、武甲山と三峰山、宝登山、釜伏峠と粥新田峠など埼玉県西部の山村を歩き、土地の古老からの聞き書きと『新編武蔵風土記稿』などの記録を交えて、竜や大蛇、天狗、幽霊、将門などの伝説を語る。土地ごとの章に小見出しを立てた随筆体で、著者の前著『ものがたり奥武蔵』で扱わなかった土地を主にとりあげる。