枡の底を叩いて捜す狐憑き
どんな伝承か
田野浦では、キツネに憑かれた者は体が軽くなり、夢遊病のように家を出て行くといわれた。姿が消えると人々は太鼓や一升枡の底を打ち鳴らし、名を呼んで戻れと叫びながら心当たりの方角を捜し歩いた。それだけに、平生から枡の底を叩く者は狐憑きでもあるまいにと戒められた。ある男が行方知れずになったときも枡を叩いて捜し、畑のわきでけがをしてぼんやり立っているのを見つけた。無理やり連れ回されてぼた餅を食べさせられたと言い、口のまわりは汚れていたという。落とすには食を断って打ち据えるので、衰えて命を落とす者もあり、穴に入れて煙でいぶすこともあった。祈禱師はトウガラシを焚いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。