畑中の地蔵堂と一法の夢告
どんな伝承か
延宝のころ、府中の里の畑中に荒れ果てた地蔵堂があった。近くに住む信心深い百姓が掃除を続けながら村人を説き、ようやく新しい堂が建つと、自らも頭を丸めて一法と名乗り、堂の脇の庵で念仏の日々を送った。あるとき一法は村人と高野山へ参り、宿の堂で座禅していると一人の僧が現れて、いま故郷の庵に村の男が忍び込み、錠をねじ切ろうとして指を傷つけた、帰りに真土峠で膏薬を買ってその男に貼ってやれと告げた。帰郷すると堂の錠は壊され、長持には血の跡が残っていた。やがて指を傷めた男が膏薬を求めに来たので、一法は地蔵の前で懺悔させてから貼ってやり、傷はたちまち治った。以後、畑中の人々は助け合うようになったという。
原典より
間もなく、一法はじめ一同が村に帰りつき、地蔵堂に来てみますと、案の定、表の錠がねじ切られており、内部に置いてある長持の錠のあたりには、血のあとが残っておりました。一法は、—— 大分県の民話 第1集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第1集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ)
『大分県の民話 第1集』は、大分県に伝わる伝説と昔話四十四話を収めた民話集である。杵築・国東・玖珠・久住・日田・大分などの土地にまつわる城主の姫の悲話、地蔵や御名号の霊験、大蛇やカッパのたたり、馬鬼退治、大友・島津の合戦の話に、亀の報恩、瓜姫、山うば、猿と蟹などの昔話を交え、方言の語りのままの話も含む。最後に、八百屋お七の恋人吉三郎が杵築の旅籠の主の勧めで八坂村白水に正寛寺を建てた由来を置く。