片袖を渡した強欲長者の娘の亡霊
どんな伝承か
むかし豊後国山香郷今畑の谷、中畑という所に強欲な長者がいた。米麦の収受に古桝と今桝を巧みに使い分け、百姓の目をごまかして巨利を貪っていた。心優しい一人娘は非道を悲しんで度々忠告したが聞き入れられず、心痛が昂じて病み、半年ののち死んだ。やがて諸国巡回の六部が訪れ、別府の海地獄のほとりで山香の中畑長者の娘の亡霊に会い、証拠に片袖を渡されたと告げた。長者は素知らぬ顔で追い返したが、その袖は納棺のとき娘に着せたものであった。夫婦は発心して供養塔を建て、廻国巡礼に出て盗賊に殺されたと伝わる。
原典より
と、不審顔をする六部を無理やり追い帰したが、その六部が届けた片袖は、納棺のときに娘に着せたものに紛れもなく、…—— 大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話)
『大分県の民話 第2集』は、土屋北彦による大分県の民話集である。日田の鬼大夫永季、府内の山弥長者、柞原八幡縁起、小豆研ぎ、百合若物語りなど、県内各地の長者譚・社寺の縁起・人柱・妖怪・英雄の伝説を、古代から江戸時代までの年号や現在の市町村名を添えて語り直す。三十二話を一話ずつ題を立てて並べ、多くは「です・ます」の語りで、方言による短い昔話も交じる。