祠で芝居を演じた寺の猫タマ
どんな伝承か
昔、草地村の古城という山あいの集落に小さな寺があった。法要帰りの和尚が夜の山道を歩いていると、稲荷の小さな祠から騒がしい声がする。のぞくと大勢の猫が芝居を見物していて、判官役の猫が切腹の場で由良之助の登場を待っていた。遅れて花道から飛び出した白猫は、寺で飼っているおす猫のタマだった。遅参を叱られたタマが、婆さんに熱い雑炊を食わされて手間取ったと返すと、見物の猫たちは大喜びした。驚いて寺に戻った和尚が尋ねると、婆さんはタマなら今雑炊を食べていたと言う。翌朝、和尚がゆうべの由良之助は見事だったと褒めると、タマは恥じたようにうなだれ、そのまま姿を消して戻らなかった。
原典より
和尚さんがよくみますと、それは寺で飼っているタマというおす猫ではありませんか。—— 大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ)
『大分県の民話 第3集』は、土屋北彦が大分県で採集した民話と古記録の奇談を編んだ民話集である。花咲か爺や猿の恩がえし、山うばなどの昔話を方言の語りのまま載せ、狐・河童・大蛇・山童・犬神の話、大友氏泰に殺された吉弘一頓の怨霊、古代の神々が越の国や三韓へ兵を出す話などを収める。あとがきに第三集は本格昔話を中心に古記録の奇談を集めたとあり、末尾に杵築市で記したあとがきを置く。