霊山の麓で文六を招いたおさん狐
どんな伝承か
文六は三年前に亡くした妻の遺書を京都の本山へ納めるため旅に出た。門司から乗った船で隣り合った年増の女と話すうち、二人とも大分の稙田の者で、霊仙という山の東と西に住んでいると分かった。連れ立って参詣を済ませた別れ際、女は家に遊びに来るよう誘った。文六が教わったとおり満月の夜に稲荷の祠の前で手を三つ打って名を呼ぶと、豆絞りの手拭をかぶった女が現れ、原っぱの茅の小屋で酒とご馳走でもてなした。不審に思った近所の者があとをつけると、文六は白い狐と踊っていたので、狐を棒で追い払った。以後、川魚を売りに来ていた女は姿を見せなくなり、霊仙の麓の川で魚を捕るおさん狐だったのだと人々は噂した。
原典より
ところが文六さんは原っぱの真ん中で、白い狐と楽しそうに酒をのんで踊っていました。—— 大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第3集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ)
『大分県の民話 第3集』は、土屋北彦が大分県で採集した民話と古記録の奇談を編んだ民話集である。花咲か爺や猿の恩がえし、山うばなどの昔話を方言の語りのまま載せ、狐・河童・大蛇・山童・犬神の話、大友氏泰に殺された吉弘一頓の怨霊、古代の神々が越の国や三韓へ兵を出す話などを収める。あとがきに第三集は本格昔話を中心に古記録の奇談を集めたとあり、末尾に杵築市で記したあとがきを置く。