茶釜で踊った猫と宙に舞った棺
どんな伝承か
藤田康邦が開いたという寄居末野の少林寺で、鉢形城が栄えていたころ、僧が一匹の猫をかわいがっていた。ある夜、寺が寝静まると茶釜の蓋を叩く音がし、見ると猫が茶釜を持って踊っていた。次の晩も続いたので僧が猫に暇を出すと、猫は恩を謝して数珠を渡し、近く鉢形城主が死ぬが、葬儀で自分が棺を天へ巻き上げるから、寺の名を名乗って数珠を投げよと告げて消えた。予言どおり城主の葬儀で棺が宙に舞い、僧が教えのとおりにすると棺は元に戻った。以来寺の格は高まり、のちに寺領十五石の朱印を受けたのもこのためだと古老はいう。
原典より
ところが、はたして棺は再びもとのところに舞い戻って来て、列座の人びとを安堵させた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。