疫神の相談を聞いた商人と少林寺
どんな伝承か
秩父市番場の札所十五番少林寺の本尊は、定朝の作と伝える一尺二寸五分の木像である。昔、近江の堅田から秩父へ商いに通う商人がいた。ある夕方、湯尾峠で腰を下ろすと、茂みの中から姿の見えない者たちの話し声がした。今年は江州に疫病をはやらせるつもりだったが、定朝が十一面観音を作って祀ったので果たせなかった、だからこれから東でやろう、という話だった。疫神どうしの相談だと気づいた商人は急いで引き返して定朝に知らせ、定朝は自作の像を授けて東国の疫難を救えと告げた。商人は像を秩父へ運び、領主に訳を話して堂を建てて祀った。これが少林寺の始まりで、土地の人は疫病を免れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。