鎖につながれた甚五郎の龍
どんな伝承か
柞の森に鎮座する秩父神社の本殿には、鎖で結わえられた龍の彫刻があり、左甚五郎の作と伝わる。昔、札所十五番近くの雨池で、毎夜子の刻になると水が激しくかき乱され、翌朝には畑の作物がなぎ倒されていた。村人が交代で見張ると、黒雲の間に爪や鱗がのぞき、龍が池の水を飲んで畑の上で暴れ回った。後をつけると龍は神社の近くでふっと消えたので、甚五郎の龍の仕業に違いないと鉄の鎖でつないだところ、作物は荒らされなくなったという。拝殿の子育虎も甚五郎作とされ、病の子の回復を願った親の祈りがかなって以来、子の病気平癒を願う参拝が続いている。
原典より
崇神帝の御代八意思兼命を祭神としてお祀りしてから実に二千有余年を数えると云われる秩父神社は、其の後、命の十世の孫に当られる知々夫彦も合祀になっているが、いま市の中央柞の森に在って土地の発展を見守っております。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。