乳の出を願う宮地の新井の井戸
どんな伝承か
秩父神社は今は柞の森にあるが、昔は宮地にあったといい、出口という地名がその証しの一つとされる。出口の東は崖になっており、その崖沿いに、近ごろまで杉や檜に囲まれた静かな泉があった。土地の人はこれを新井と呼ぶ。水は一年中清らかで量も豊かで、水神が祀られ、古いものから新しいものまで多くの柄杓が奉納されている。昔から乳の出ない母親がこの水をいただいて帰り、粥を炊いて食べると乳がよく出るようになると言い伝えられ、願をかける人が絶えないという。新井の少し北にも、柿の大木の根元から湧く同じような井戸があったが、今は見る影もないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。