キュウリを恐れた府中の氏子
どんな伝承か
館山に近く、平久里川に沿った国府村の府中では、昭和の初めごろまでキュウリを魔物のように恐れていた。一軒として畑に作らず、よそへ出てもキュウリを使った料理には箸をつけなかったという。村社の八阪神社の神がキュウリを食う者に怒り、熱病にかからせると信じられていたからである。キュウリはカッパと縁の深い食べ物で、そのカッパはもともと子どもの姿を借りた水神の化身にほかならない。水神へ供える初物だから人は口にしない——そう筋道をたどることができると著者は説く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。