首を打ち落とされた勝願寺の児喰仁王
どんな伝承か
鴻巣の勝願寺には、運慶の作と伝わる仁王像があった。寺がまだ登戸にあったころ、この仁王は夜になると往来の人を驚かし、西風の吹く日には昼でも近くの女や子どもを脅かしたので、人々は日が暮れると出歩かなくなった。子どもを取って食ったともいわれ、児喰仁王と呼ばれた。寺の僧ははじめ取り合わなかったが、三世の良誉上人は話を聞いて大いに驚き、自ら斧を手に山門へ向かって仁王の頭を打ち落とした。仏師に新しい首を作らせ、もとの頭は櫃に納めて山門の楼上に封じたところ、怪異はやんだという。
原典より
この仁王は夜になると、往来の人をおどろかし、あるいは西風の吹くときなどは、昼夜の区別なく近辺の婦女小児等をおびやかすので、これを伝え聞いた人々は日が暮れると出あるくことさえさしひかえるようになった。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。