鎌渕の竜の山引きとオサ
どんな伝承か
旧名栗村穴沢の鎌渕には昔から竜が棲み、集落の美しい娘に恋をしていたので、娘には竜の言葉が分かった。ある日、竜が近く山引きをするから手伝ってほしいと頼むと、娘は機織が忙しいと断った。山引きの話を聞いた村人が娘に相談すると、山の周りに機織のオサを立てればよいと教えられ、村じゅうのオサを集めて立てたので、その時は何事もなかった。しかし明治四十三年、ついに山崩れが起きた。竜神は沢の口を埋めて池を造ろうとし、要る女の髪を老婆たちから借り集めたが、わずかに長さが足らず、池はできなかったという。
原典より
娘は、「山の周囲にオサを持って行って立てればよい」と教えてくれた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。