眼を封じられた天井画の竜
どんな伝承か
奈良市の油阪町の蓮長寺には、片目の竜の話が伝わっている。この寺の本堂の内陣の天井には、狩野法眼が描いた竜がある。三百余年前、奈良に旱魃がつづいたとき、付近の人々がこの寺に集まって祈願したところ、竜神ヶ池から竜が現われて大雨が降った。その後も、この寺の竜がしばしば外に出るので、人々は恐ろしさのあまり竜の眼に墨をぬった。それ以来、竜は出なくなったという。また一説には、この竜が夜な夜な外に出て近所の家の飯を食い荒らすので鎖でゆわえたところ、それ以来外に出なくなったともいう。なお同様の伝説は、広大寺の奥の院と呼ばれる竜象寺にも伝わっている。
原典より
広大寺の奥の院と呼ばれている竜象寺の本堂に竜が描かれてある。—— 奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。