五十一代続く深浦の山伏上人
どんな伝承か
今年初秋の、風がはやくも冷ややかな朝であった。著者は津軽の海岸の淋しい荒浜の道を、ひとりで歩いた。かつて『深浦沿革史』を世に公にした海浦さんという人は、名が義観というから僧侶であろうとは思っていたが、あんな阿倍比羅夫の直系のような、昔のままの山伏であろうとは考えていなかった。自分まででもう五十一代、肉身の相伝でこの十一面観世音にお仕え申すのだと言われた。一宗の事相は淵底を究めた篤信の聖である。明治五年に修験の職は廃せられたが、俗生活のままで成仏する教理に基づいて肉食もすれば妻子も育んできたのだと説く、一度会ったら忘れられない上人であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。