泊の製塩場へにがりを汲みに通う女たち
どんな伝承か
田舎の邑里にも二里一里の間に真の豆腐屋がいずれできるだろう。そんな未来には構わず、村々の貞淑な女たちは黙って豆腐を作り、半分を売っている。首里から岡を越えて那覇へ出る道を、晴れた日には幾人となく桶を頭に戴き、泊の製塩場に鹵汁を汲みに往来するのは、いずれも白い豆腐の楽しみを隣人と分かとうとして労苦する女性である。以前は浜に下りて海の水を汲んで還ったそうだ。松風村雨の昔とても、潮を汲むわざはそう風流ではなかったはずである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。