豆腐しか食べない留置場のこそ泥
どんな伝承か
戦争前のこと、本所の警察でこそ泥が捕まり、留置場に入れられた。朝の食事どきになると、すみませんが豆腐を二丁ほど、と言い出す。聞いてみると、この男は米の飯を一粒も食べず、主食はもっぱら豆腐なのだという。そこで本所警察署では、この男が留置されている間、豆腐屋と契約し、朝昼晩の三度、二丁ずつ届けてもらうことになった。近ごろは蛋白質の補いには妙な肉より大豆のほうがはるかによいといわれる。知ってか知らずか、このこそ泥は誰よりも健康に気を配っていたことになる、と著者は結んでいる。
原典より
戦争前のことだが、本所の警察でこそ泥がつかまり、留置所にぶちこまれた。—— 奇談千夜一夜(庄司浅水・現代教養文庫・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談千夜一夜(庄司浅水・現代教養文庫・1969年(昭和44年))
『奇談千夜一夜』は、庄司浅水が一九六九年に現代教養文庫の一冊として編著した世界の奇談集である。世界各地の奇習、難破船や蘇生の奇談、世界一の記録、奇妙な裁判や脱獄、奇人の逸話、珍しい動植物の話を、リプレーの『信じようと信じまいと』やストーラーの『驚くべきことだが事実だ』などを種本に集める。奇習・奇談・奇録・奇聞・奇人・動物と植物の部に分け、奇人の部はさらに四つに分け、各国の別れの挨拶を紹介する「さようなら」で結ぶ。