深田・小五郎の炭竈跡と家伝の花炭
どんな伝承か
近年は石仏によって一層有名になった、臼杵の城下に近い深田の里には、炭焼小五郎が焼いたという炭竈の址があり、岩の崩れの間から炭の屑の残片という物が無数に出る。長者の後裔と称する家には、俵のまま焼けた炭が二俵と鉈などを持ち伝え、一年一度の先祖祭にこれを陳列して人に見せる。あるいはまた家伝の花炭と称して、七十八代の間連綿としてこれを製したという由緒書も伝わっている。すなわちある特定の家族においては、この物語は今も決して単純なる文学ではないと柳田は記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。