道後電車で火打石を打つ老人
どんな伝承か
伊予の松山から道後湯へ通う電車は、かつて車内での喫煙が許されていた。ある時、ひょっこり乗り込んできた草鞋がけの老人が、燧石を取り出してカチカチと火打ちをするのを見て、乗り合わせた英国人の旅客は目を丸くし、「日本はこれだから解し難い」と感嘆したという。旧式の発火法が新しい電車の中でも使われている、保守と新技術が同居する光景であった。
原典より
ひよつこりと乗り込んで來た草鞋がけの老人が、燧石を出してカチくと遣るのを見て、英國の一旅客は眼を圓くし、あゝ日本は是だから解し難いと感歎した。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。