煙草の煙が立ちこめる島田の祭
どんな伝承か
祭の日の町にただよう匂いを論じた文の後半で、著者は煙草の香りを取り上げる。駿河の島田の祭では煙草の煙の香りが驚くほど強く、かぎ過ごすことができなかった。見物人に脱帽を命じた神輿の世話役までがくわえ煙草で、踊屋台の上でも下でも、女たちにまじった若者がとりわけバットや敷島を好んで吸っていた。僧侶に抹香がつきものであるような一種の流行と思われたが、それが祭の空気を作っていることには感心しなかったという。
原典より
煙草を酒と對立させるのも洋風であるが、島田の祭では驚くほど此煙の香が高くて、嗅ぎ過すことが出来なかつた。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。